「そろそろ自社のホームページを作ろう」と考え始めたとき、多くの小規模事業者がまず行うのは、制作会社への問い合わせや、見積もりの比較ではないでしょうか。
しかし、実はその前にやっておくべきことがあります。それは「ホームページを作る前の準備」です。
準備が不十分なまま制作に入ってしまうと、完成してから「思っていたものと違う」「問い合わせがまったく来ない」「結局更新できずに放置している」といった事態になりがちです。
本記事では、ホームページ制作を発注する前に、事業者自身が決めておきたい項目を実務目線で解説します。
結論|ホームページ制作の成否は「作る前」に決まる
先に結論からお伝えします。ホームページの成否は、デザインの良し悪しや制作会社の腕前よりも、「作る前にどれだけ目的と方針を明確にできているか」で大きく決まります。
具体的には、次の6項目を発注前に整理しておくと、制作プロセスがスムーズに進み、完成後の運用もうまくいきます。
- ホームページの目的(何のために作るのか)
- ターゲット(誰に見てもらうのか)
- ゴール(訪問者にどう行動してほしいのか)
- 掲載コンテンツ(何を載せるのか)
- 運用体制(誰がどう更新するのか)
- 予算と時間軸(いくらで、いつまでに)
以下で、それぞれの項目をもう少し詳しく見ていきます。
なぜ「作る前の準備」がそれほど重要なのか
ホームページは、作って終わりではなく、運用してはじめて成果が出る性質のものです。準備不足のまま制作を進めると、次のような問題が発生しやすくなります。
| 準備不足によって起きる問題 | 具体的な状況 |
|---|---|
| 目的のずれ | 「とりあえず作った」結果、誰にも届かないサイトになる |
| 仕様変更の繰り返し | 制作途中で要望が変わり、追加費用や納期遅延が発生する |
| 更新の停滞 | 運用ルールが決まっておらず、情報が古いまま放置される |
| 問い合わせの不在 | 導線設計がなく、訪問者がいても行動につながらない |
制作会社は、依頼内容に沿ってサイトを形にする専門家です。しかし、「自社が何を伝えたいのか」「誰に届けたいのか」を決めるのは、あくまで事業者自身の役割です。
この部分を制作会社に丸投げしてしまうと、汎用的で個性のないサイトになってしまうことが少なくありません。
作る前に決めておきたい6つの項目
1. ホームページの目的を明確にする
まず最初に決めるべきは、「何のためにホームページを作るのか」という目的です。一見当たり前のようですが、ここが曖昧なまま制作が始まるケースは非常に多くあります。
目的の例としては、次のようなものが挙げられます。
- 新規顧客からの問い合わせや見積もり依頼を獲得したい
- 会社の信頼性を示し、取引先に安心してもらいたい
- 採用活動の窓口として使いたい
- 既存顧客への情報提供の場にしたい
- 商品やサービスをオンラインで販売したい
目的によって、必要なページ構成も、デザインの方向性も、運用方法もまったく変わってきます。「問い合わせ獲得が目的のサイト」と「採用が目的のサイト」では、トップページに置くべき要素も違うのです。
複数の目的を持たせること自体は問題ありませんが、その場合でも「最も重要な目的は何か」を一つに絞っておくことをおすすめします。
2. ターゲットを具体的に描く
次に、誰に見てもらうサイトなのかを具体的にします。「30代〜50代の経営者」といった大まかな括りではなく、もう一段階踏み込んで描くと方針が定まります。
たとえば、地域密着型の工務店であれば、次のようにイメージできます。
- 自宅から車で30分圏内に住んでいる
- 築20年以上の戸建てに住んでいる
- 水回りのリフォームを検討している
- 大手より地元の業者に頼みたいと考えている
- 過去にトラブル経験があり、信頼できる会社を探している
ここまで具体的にすると、サイトに載せるべき内容が見えてきます。「施工事例の地域名」「アフター対応の説明」「スタッフ紹介」など、その読者が安心するために必要な情報が自然と浮かび上がってくるのです。
3. ゴール(訪問者の行動)を決める
サイトに来た人に、最終的に何をしてほしいのか。これを「コンバージョン」と呼びますが、難しく考える必要はありません。要するに「行動のゴール」です。
| 業種の例 | 主なゴールの例 |
|---|---|
| 士業・コンサル | 無料相談の予約、問い合わせフォーム送信 |
| 飲食店・サロン | 予約フォーム送信、電話発信 |
| BtoB企業 | 資料請求、見積もり依頼 |
| スクール・教室 | 体験申込、LINE登録 |
| EC・物販 | 商品の購入、メルマガ登録 |
ゴールが決まると、ボタンの配置、フォームの設計、各ページの誘導の流れが明確になります。逆にゴールが決まっていないと、「お問い合わせはこちら」というボタンを置くだけの、よくある形のサイトになってしまいがちです。
4. 掲載するコンテンツを洗い出す
目的、ターゲット、ゴールが決まったら、それを実現するためにどんな情報を載せるべきかを考えます。
多くの小規模事業者が見落としがちですが、ホームページの中身(文章・写真・実績データ)は、ほとんどの場合、事業者側で用意する必要があります。
最低限、次のような素材を整理しておくと制作がスムーズです。
- 会社や事業者の紹介文、代表者プロフィール
- 提供している商品・サービスの一覧と説明
- 料金体系(公開できる範囲で)
- 過去の実績、施工事例、お客様の声
- 使用できる写真素材(自社で撮影したもの)
- 会社概要、所在地、連絡先、営業時間
特に「写真」と「お客様の声」は、後から集めようとすると時間がかかります。制作と並行して準備を始めるのが現実的です。
5. 公開後の運用体制を考える
意外と忘れられがちなのが、公開後の運用です。ホームページは作って終わりではありません。情報が古いままのサイトは、訪問者に「この会社、まだ営業しているのだろうか」という不安を与えてしまいます。
運用に関して、最低限決めておきたい項目は次のとおりです。
| 決めておく項目 | 検討内容 |
|---|---|
| 更新担当者 | 社内で誰が更新するのか、外部に委託するのか |
| 更新頻度 | 月に何回、どんな内容を更新するのか |
| 更新範囲 | お知らせのみか、ブログや実績まで含めるか |
| 問い合わせ対応 | 誰がフォーム送信を受け取り、何時間以内に返信するか |
| セキュリティ管理 | WordPressやプラグインの更新は誰が行うか |
WordPressで制作する場合、プラグインの更新や定期的なバックアップなど、技術的なメンテナンスも必要です。社内で対応できないなら、保守契約の有無も含めて事前に検討しておくと安心です。
6. 予算と時間軸を現実的に設定する
最後に予算と時間軸です。ここは制作会社に相談する前に、ある程度の幅を持って考えておくとよいでしょう。
一般的な小規模事業者向けのホームページ制作費用は、構成や規模によって大きく異なりますが、おおむね次のような幅があります。
- テンプレート活用の小規模サイト:数万円〜30万円程度
- WordPressでの標準的な企業サイト:30万円〜80万円程度
- オリジナルデザインや機能を含むサイト:80万円〜200万円程度
- ランディングページ(LP)単体:10万円〜40万円程度
制作費用以外に、ドメイン代、サーバー代、保守費用、写真撮影費、原稿作成費などが別途必要になる場合もあります。総額でいくらかかるのかを意識しておくと、見積もりを比較するときの判断軸ができます。
時間軸についても、「来月までに公開したい」という希望は、原稿や写真の準備状況によっては現実的でないこともあります。一般的に、ヒアリングから公開まで2〜4ヶ月程度を見込んでおくと、余裕を持って進められます。
注意点|ありがちな失敗を避けるために
ここまで紹介した準備に加えて、特に注意しておきたい点を3つお伝えします。
他社サイトの「真似」だけで決めない
同業他社の魅力的なサイトを参考にすることは大切ですが、「あれと同じものを作ってください」という発注の仕方は避けたほうがよいでしょう。
同業他社と自社では、得意分野、ターゲット、商品ラインナップが異なります。表面のデザインだけ似せても、肝心の中身が伴わなければ成果にはつながりません。
「とにかく安く」だけで選ばない
制作費用を抑えること自体は健全な判断ですが、価格だけで選ぶと、公開後のサポートが手薄だったり、修正のたびに追加費用が発生したりすることがあります。
総額と運用後のコストも含めて、長期的な視点で判断するのが安全です。
公開がゴールだと考えない
ホームページは公開してからが本当のスタートです。アクセス解析を見ながら改善を重ね、ブログを更新し、必要に応じてページを追加していく。
この継続的な運用ができるかどうかで、半年後、一年後の成果が大きく変わります。最初から完璧を目指さず、運用しながら育てていく前提で計画を立てると、無理がありません。
まとめ
ホームページ制作は、依頼してから動き出すものというより、依頼する前の準備で成否が決まるものです。本記事で紹介した6項目をもう一度整理します。
- 目的:何のために作るのか
- ターゲット:誰に見てもらうのか
- ゴール:訪問者にどう行動してほしいのか
- 掲載コンテンツ:何を載せるのか
- 運用体制:誰がどう更新するのか
- 予算と時間軸:いくらで、いつまでに作るのか
これらを紙一枚にまとめておくだけで、制作会社とのやり取りは格段にスムーズになります。
打ち合わせの場で「どうしましょうか」と問われたときに、自分の言葉で答えられる状態を作っておくこと。これが、後悔しないホームページ制作の第一歩です。
もし、自社だけで整理するのが難しい場合や、業種に合わせた具体的な方針を相談したい場合は、Web制作の知見を持つ専門家に壁打ち相手になってもらうのも一つの方法です。
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